Vitra Campus(ヴィトラ キャンパス)建築探訪 後編
Vitra Campus(ヴィトラ キャンパス)建築探訪。今回は後編でございます。
ユニークで独創的な建築をご紹介しております。前編・中編も是非ご覧下さい。
敷地内を更に進みます。最初にご紹介する建築の作り手は、もしかしたら建築にはあまりご興味のない方でもご存知かもしれません。
今回のツアーの中で、個人的に一番衝撃的だった作品でした。
この外観。無機質なコンクリートの外見と鋭角なシルエット。こちらはイラク出身の女性建築家ザハ・ハディドによるものです。
ザハ・ハディドと言えば記憶に新しい東京オリンピック新国立競技場の国際建築コンペで話題となりましたよね。
現実的というよりは、コンセプト色の強い空想的なデザインを現実空間に引き入れようとする、「脱構築主義」という建築思想を代表する建築家として度々名前が上げられる彼女の建築アイデアは、革新的で今までに無いものばかりで、数々の建築コンペで優勝してきました。ですが、その奇抜で難解なデザイン故に実現が難しく、アンビルド(実現不可建築)の女王と呼ばれることもある程でした。
この特徴的な建物は、Vitra Campus内のファイヤーステーション(消防署)として1993年に完成しました。ザハ・ハディドにとって初めて実現した建築作品でもある記念すべきものです。
こちらがピットガレージです。現在は残念ながら実際には使用されていませんが、このスペースに消防車などの車両を待機させていたとのこと。
高さが変化した天井部分が重いコンクリートの材質にそぐわず非常に緊張感があります。窓は必要以上に大きく配置され、外部からは中の様子が綺麗に見えます。
ロッカーボックスと通路。ロッカーボックスの壁面はピカピカのステンレスで造作されています。写真には映っていませんが、所々鋭角な角面が存在していてぼーっとしていると脚をぶつけて痛い思いをしそうでした。
二階へと上がる階段部分。思わず声が出ましたが、この階段非常によくしなるのです。不思議な浮遊感がありました。素早く上り下がりが可能なように、間隔が良く工夫されています。
階段を上がって、二階部分は休憩所となっています。ここでも壁や造作された棚などが独特の形状で配されています。こちらは天井の勾配を確認しているところ。手前から奥に向かって低くなっていきます。
この写真の手前の壁面は一部赤く塗られており、正直全く休憩する気にならない程落ち着きません(笑)
何故このような作りなのかをザハに尋ねたところ、常に危険と隣り合わせの職業である消防士の方が、出動に向けての緊張感を常に保てるようにとの意図でこのような設計を考えたそうです。休憩所のテーブルはザハ・ハディドオリジナルのものらしく、ステンレスの天板のスペーシーなデザイン。椅子はつやつやのパントンクラシックが合わせてありました。この組み合わせが非常にかっこいい。
ザハ・ハディドはこの建築の後、技術の進歩により彼女のアイデアが世界各国で実現され、ロンドン五輪で使用されたアクアティクス・センターや、イタリア・ローマの国立21世紀美術館などに代表される素晴らしい作品を数多く作り上げました。
今なおも数多くのプロジェクトを抱える彼女でしたが、残念ながら、今年3月31日に心臓発作の為65歳でこの世を去りました。彼女の残した作品は、後の世の建築家に大きな影響を与え続けるであろうと言われています。この消防署もそのようにずっと語り継がれていくのでしょう。
ザハ・ハディドの消防署のすぐ隣にあるこの建物は、今年完成したばかりのもの。Vitraのショーデポスペースとして所蔵コレクション約400点(何とそれでもごく一部)を展示しています。
シンプルで、クラシカルな印象です。ザハの建築との並びが絶妙で、このコントラストは特に美しいとVitraのスタッフの方もおっしゃっていました。
こちらはスイス・バーゼル出身の建築家ユニット、ヘルツォーク&ドムーロンの作品です。ヘルツォーク&ドムーロンの作品と言えばこのVitra Campusではあまりにも有名なヴィトラ・ハウス(後で登場します)がございます。
初見の印象がそれぞれ全く異なる建築が多いため、見ていて楽しいです。彼らの日本でのお仕事は、東京・青山のプラダショップがございますが、こちらは建物表面をガラスが覆い、蜜蜂の巣のような内部構造が透けて見える斬新な形状です。同一人物の作品とは思えない程の印象の違いなので是非一度ご覧になっていただきたいです。
ショーデポの内部は、圧倒的な新旧のチェアコレクションが展示されています。そして地下には今回のトリップ参加者を驚愕させた更なるコレクションが・・・(笑)ショーデポ内はまた改めてご紹介予定です。
隣接した建物はカフェになっており、Vitra社の調度品がセンスよく配置されています。大好きなジャン・プルーヴェのテーブルや椅子。そしてカウンターのポテンスランプ。ほんとに抜かり無くお洒落です。カフェスタッフの方々もかっこよかったですよ。
カフェで一息ついた後は更に奥に。
出ました。ヴィトラ・スライドタワー。カールステン・ヘラーによる大型滑り台です。Vitraらしい遊び心に満ちあふれた建築です。というより、これを「よし!!建てよう!!」となるのが本当にさすがです。
お子さん連れのお父さんやお母さんが見守る中、子供たちはガンガン上から滑り降りて来ます。4階建てビルくらいの高さでしょうか。結構な傾斜です。もちろん自分も滑ってきました。正直怖いです(確実に安全は確保されています)。ごめんなさい。ビビリすぎて余裕が無く写真がありません。
気を取り直して、ほぼ敷地内を一周して入り口にあるVira House(ヴィトラ・ハウス)まで戻って参りました。
このヴィトラ・ハウスは先ほどのショーデポを手がけたヘルツォーク&ドムーロンによる建築です。自分がもう書籍で穴が開く程見続けて来たこの建築。いざ目の前にしての感想は、デカい。とにかく想像していたよりずっとデカい。もう感無量です。
建築としては割と新しく、2010年に完成しました。内部はカフェ・ミュージアムショップ・ショールーム・オフィスを兼ねています。自分のヘルツォーク&ドムーロンのイメージである、シンプルミニマルが群生した大好きな建築です。
1日みっちりガイドしてくださったヴィトラ・デザインミュージアムのキュレーターさん(ザハ・ハディドそっくり!)。手にもっているのはこのヴィトラ・ハウスの超簡易平面図。シンプルな箱型の建物が12個重なり合ってこのような建物になっているのです。
2010年に完成してから、このVitra Campusのアイコンとして世界各国の人々を魅了し続けています。キャンパスに向かうハイウェイの途中、遠くからもこのヴィトラ・ハウスはよく見えて、Vitraの良い広告塔となっておりました。
いかがだったでしょうか?知識が乏しい部分もあり、お見苦しい点もあったかと思いますが、自分としては本当に良い経験となりました。お伝えきれなかったヴィトラ・ハウス内部やショーデポコレクションはまた改めてご紹介させてくださいませ。
宮崎
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