Quiet Corner -心を静める音楽集- Web連載 第6回
Ricardo Valverde / Xire De Vibrafone
梅雨が明けて夏到来。連日うだるような猛暑が続いておりますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか? くれぐれもご自愛ください。私も本来であれば、家族と共にこの夏を満喫したい気分ですが、なかなかそうにもいきません。家の庭に小さなビニールプールを出して、ビールを飲みながら、子どもたちの笑顔を眺めるのがささやかな楽しみとなっています。あとは、家でゆっくりと映画を観たりして、なるべく外出しないように心がけています。映画といえば先日、私の大好きな名作がブルーレイ化を果たしました。1959年公開の『真夏の夜のジャズ』です。4Kデジタル修復版で蘇った、美しい映像と音に魅せられます。ご興味ある方はぜひ。さて、今回はそんな“真夏の夜のクワイエット・コーナー”と題して、心も身体もクールダウンしてくれる音楽を選んでみました。
まずはブラジルのヴィブラフォン奏者ヒカルド・ヴァルヴェルヂの作品です。ブラジルのバイーア地方を発祥とするカンドンブレと呼ばれる宗教儀式のリズムを基礎に、50年代の、ジョージ・シアリング・クァルテットのようなクール・ジャズにも通じる、繊細なアレンジメントや抑制を効かせたアンサンブルも魅力的です。洒脱で軽やか、まさにセンスの良さがにじみ出た一枚です。そして、ヴィブラフォンという美しい音色をもつ楽器の、色彩豊かな表情にも注目です。
ブラジルからキューバへ。こちらはキューバ出身のギタリスト、マルコ・タマヨによるソロ・ギター集。レパートリーはどれもキューバの古い作曲家によるものです。近年“フィーリン”と呼ばれる、穏やかで洗練されたキューバ音楽が注目を集めていますが、こちらもそれに通じるような静謐さをもった音楽です。少し気怠くて、淡々として演奏は、思わずくせになる心地よさ。陽射しの強い午後に、何も考えず、ぼーっとしながら聴くのをおすすめします。
最後はキューバからアフリカへ。“アフリカン・ハープ”と呼ばれる、とても美しい音を出す楽器コラの名奏者として知られるバラケ・シソコのアルバムです。このコラという楽器の音は、ぜひ一度聴いて頂きたいです。まるで天上のような響きで、心を深く静めてくれる作用もあります。それでいて洗練されたモダンな雰囲気も感じられ、こういう音楽に触れる度に、世界にはポピュラーではない素晴らしい音楽がまだ沢山あるという気分にさせてくれます。ぜひ、寝苦しい熱帯夜のBGMにいかがでしょうか。
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Marco Tamayo / Guitar Music From Cuba
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Ballake Sissoko / Djourou
【プロフィール】
山本勇樹
HMV本部にて商品バイイングを担当する傍ら、ラジオやUSENの選曲、数多くのライナー・ノーツや雑誌への寄稿を行い、2014年には書籍『クワイエット・コーナー~心を静める音楽集』を刊行。過去に文具ブランドのデルフォニックスや洋服ブランドのニシカとコラボレーションを実現。また友人の吉本宏と共にbar buenos airesの活動も行う。2016年にはモントルージャズ・フェスティバル50周年の公式リポートを担当した。2020年12月に韓国にてクワイエット・コーナーの新刊を出版。2021年8月には、7年ぶりの新刊『クワイエット・コーナー 2~日常に寄り添う音楽集』を刊行。
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